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~総支配人からのメッセージ第5話~ SHONAI HOTEL SUIDEN TERRASSE 中 弥生氏

SHONAI HOTEL SUIDEN TERRASSE 総支配人 中 弥生氏

新型コロナウイルスは、これまでに私たちの生活に大きな変化と影響を与えてきました。そして、今、ホテル・ブライダル業界もさまざまな対応が求められています。

ホテルの運営全般を担う“総支配人”。
総支配人という立場で、このコロナ禍をどのように受け止めているのか。

未来のホテル・ブライダル業界をめざす高校生へ、総支配人からのメッセージをお届けします。

SHONAI HOTEL SUIDEN TERRASSE 総支配人 中 弥生氏

第5話の今回は、第4話メルキュール東京銀座の支配人佐々木博さんよりご紹介いただきましたSHONAI HOTEL SUIDEN TERRASSE総支配人の中弥生さんに話を聞きました。

“ようこそ、田んぼに浮かぶホテルへ。”
日本人だからこそ、このメッセージに心を奪われる。

「地域の魅力をプロデュースし、世界からの目的地となる」をミッションに掲げ、2018年9月19日に開業。
山形県の庄内平野の水田の上に浮かぶように建つホテルが、スイデンテラスです。
特別な時間を過ごせるよう「空間・食・本・農・癒・地域」の6つのコンセプトでお客様を迎えています。

――コロナ禍での総支配人への就任。厳しい環境をどうとらえていましたか?
これまでの25年間のホテリエ人生の中で、直近の10年間は総支配人としての役割を担っていました。その10年間は激動の期間でした。世界的な金融危機により経済のダメージを受けた時期もある一方で訪日外国人観光客の増加によりホテル業界としては多くの佳き機会が生まれ、多くの経験をしました。

私がこれまで経験してきたザ・リッツ・カールトンやパーク ハイアットなどの外資系ホテル、また三井ガーデンホテルなどの国内チェーンホテルの運営方法をそのまま行うのではなく、どのように地方のホテルに応用させることができるのか、を考えました。地方には都市部にない「独自性」や「地域性」があります。それらをホテルという場所をとおしてどのような新しい価値を創ることができるのかを考えることで、逆に厳しい環境を打破できると思い取り組んでいます。

――新型コロナウイルス感染症はホテルにどのような影響を与えましたか?
これまでに世の中の流れの中で厳しい状況は何度も経験してきましたが、今回の感染症においては長期化していることが大きな壁となっており、やりたいのにできないこと、どうしようもないことに直面しました。しかし悪いことだけではありません。これまで当たり前だった「人と会って食事をする」「旅行する」といった時間がいかに大切だったのか、多くの人たちが気づいたのではないでしょうか。私たち観光業界は幸せ産業の一つだと思いますが、今回のことにより“楽しい”場面だけでなく“つらい”場面でも私たちの業界は成り立つと学びました。それは「お客さまに寄り添う」という基本姿勢や考え方により新しいサービスが生まれるということが多々あったからです。

――「お客様に寄り添う」という考え方で生まれた新しい価値とは何でしょうか。
ホテルのレストランのテイクアウトは代表的な事例だと思います。都心部も私たちのホテルレストランも客席を間引いたり、営業時間を変更したりしながら運営を行なってきました。ディナーを提供できないホテルも多々ある中、生まれたのが「テイクアウト」というサービスです。多くの我慢やつらい状況の中、ひとときでもホテルレストランのお食事を愉しんでいただくことで特別な気持ちになったり、気分転換となったりする時間を提供できた、これは今までにはなかったホテルが新たに生み出した価値です。ホテルとはどんな状況であっても人々の心を幸せにする産業であると私は思っています。

スイデンテラスでは、朝食や夕食をお重スタイルで提供しています。感染症対策の一環として提供方法や食事環境を整備したことで、安心して食事を楽しんでいただけます。感染症が心配でお部屋で食事を楽しみたいというお客様もいらっしゃいます。提供スタイルを変えたことで、山形庄内の旬な食材を新たな形でお客様の手にお届けできました。

――コロナ禍の今、ホテルの総支配人として大切にしていることは何ですか?
従業員がどのような気持ちで働いているかに必ず気を配っています。コロナ禍においては、感染が拡大する中で、不安を持ちながら働いている従業員もいることを承知していますので、ホテルからマスクや手袋、エプロンなどを支給したり、感染症に対して留意すべきことや不安を解消するためのメッセージを自身の言葉で従業員の皆に伝えるようにしています。

――コロナによる影響で、ホテルスタッフの皆様の意識や提供するサービスに変化はありましたか?
お客様との接し方、が最も変わったと感じています。ホスピタリティ業界ですので、いかにお客様との距離を縮め対応できるか、が価値の一つであったにもかかわらず物理的な距離を少し取らないといけない、言葉もなるべく簡潔に時間をかけずに対応する、ということを求めるお客様が増えたという現実があります。しかしながらこれまでと同様の満足度、あるいはこれまで以上の喜びや心地よさを感じていただくために「傾聴」の仕方に工夫をするようにしています。そのときの表情だったり目線だったりに気を配り臨機応変さが一層求められていると思います。

スイデンテラスのレストランでは、庄内の旬の食材を新鮮な状態でお客様に提供しています。これは私たちのホテルのコンセプトの一つで、これまではその思いを口頭でお客様にお伝えしていました。今現在は、ホテルが考える「食」に対する思いを文字にして、冊子という新しいツールに変換して口頭でのご説明に加えてお伝えしています。ホテル全体でコンセプトや私たちが大事にしていることをより鮮明に発信できるよう、チェックイン時のご案内冊子においてもデザインを変えました。ただ泊まる、ということだけでなく記憶ともに残るツールが手元にあることにより旅の思い出の一つとしてお客様の心に残っていっていただけたら嬉しいと思います。

SHONAI HOTEL SUIDEN TERRASSE 総支配人 中 弥生氏
パーク ハイアット 東京、ザ・リッツ・カールトン大阪、ザ・ブセナテラスなどの複数のラグジュアリーホテルおよびリゾートでの経験の後、箱根・翠松園の開業に副総支配人として参画。その後、ホテルアジール・奈良の総支配人として地域と共存するホテル運営を実践。その経験から、銀座グランドホテルのリブランドプロジェクトを経て、三井ガーデンホテル銀座プレミア、ホテル ザ セレスティン銀座の総支配人を歴任。2019年11月、株式会社アライブ・ホスピタリティ・デザインを創業。2021年6月よりヤマガタデザインリゾート株式会社の運営を受託、同ホテルの総支配人に就任。

――ホテルでのSDGsに関する取り組みに注目が集まっています。スイデンテラスではどのような取り組みを進めていますか?
さまざまな取り組みをしていますが、一つは食品廃棄です。レストランで仕入れた野菜の蔕(へた)や皮などの食べない部分を廃棄せず、「野菜の塩」をつくれないか、という取り組みを始めています。商品化することにより目に見える形でホテルの考え方がお客様に伝わりそこに「共感」が生まれる。その共感こそが大事だと思っています。この取組は地元企業の技術を活用しており、地域の企業と連携し取り組むということもホテルを中心とした「地域の力」を発揮することにつながる、と考えています。

――コロナ禍におけるこれまでの経験から、ホテル業界はどのような人材を求めているのでしょうか?
時代の移り変わりとともに、ホテルも時代に合わせて変化し、今、ライフスタイルホテルをはじめ、さまざまな新しい形のホテルが登場しています。しかしながら、ホテルの形が変わっても求める人材像として変わらないものもあります。それは、活躍の場がどのようなホテルであっても共通していることは「お客様を迎える準備ができていること」。そして、お客様に対して自分自身の「軸」を持ちながら、柔軟にフィット(調和)していける人が求められると思います。笑顔や言葉遣い、そして佇まいといった「基本」とともに「柔軟性」を持ち突き進んでいる人に、人は魅力を感じ、お客様が来てくださるのではないでしょうか。

そして「仕事を好きになる努力」。どんな仕事そうだと思いますが、ホテルの仕事を選んだ人は、ホテルの仕事の中で何かが好きで選んだはずです。最初からすべてを好きだという人はいないと思います。ひょっとすると何かのきっかけでこの仕事は自分に向いていない、と思ってしまうこともあるかもしれません。ホテルの仕事には自分でコントロールできない場面に多々巡り合うことがあります。その中で、ネガティブにとらえず、一つひとつの仕事やその状況を好きになる努力をすることで、その先に“楽しみ”があると思います。

――コロナは観光業界に大きな影響を与えました。ホテルやブライダルの仕事に興味を持つ高校生にとってホテル業界はめざすべき業界の一つには変わりないのでしょうか?
絶対にめざして欲しいですね。「人を幸せにする仕事」はたくさんあります。しかし、ホテルほどお客様に対して“直接的”な仕事はないと私は思っています。お客様対応において、自身が発した言葉や行動に対してのお客様の反応は実にダイレクトです。その場で受け入れていただけた、あるいは心に届かなかったということが一瞬にして跳ね返ってきます。その反復こそが日々成長させてくれるものであり、対応力がついていきます。お客様に対する真剣な思いの先にあるものはお客様の幸せな表情が自分の幸せにもなる、そのような連鎖が生まれる仕事であると思っています。

そして、活躍のフィールドは世界中にあること。自分自身の選択によりますが、東京や大阪などの都心部、あるいはリゾート地のみならず、基本オペレーションさえ習得すれば働くフィールドは世界中に広がります。自分の考え方、チャレンジの仕方一つなんですね。私は、本当の“グローバル”というのは、「自分自身の立ち位置が分かっていること」だと考えています。将来にどのような仕事をめざすべきかと考える上で、自分を俯瞰してみること、言い換えるならば「自分の価値を考えてみる」ことは大事な視点だと思います。

――時代の変化とともに、ホテルも宿泊に留まらない付加価値や革新的なサービスを提供する施設へと変貌しています。そして、ホテルをはじめとした宿泊施設が、食物の生産者や観光地、伝統工芸に関わる人々をはじめとした地域の人と連携し、つながりを深めることで「地域の力」を強くしています。「地域の魅力をプロデュースし、世界からの目的地となる」というミッションを掲げるスイデンテラスはその代表的なホテルの一つでしょう。

10年間の総支配人経験を含む25年以上にわたるラグジュアリーホテル、リゾートホテル、シティホテル、旅館とさまざまなホテルでの現場経験を持つ中さん。これまでのご経験をとともに地域性に強みを持つ地方のホテルで新しい価値を創ることに挑戦する姿は大変輝いていました。

「何か一つでも続けられることを持つことは人生において自信になる」。もしかすると時代遅れで格好悪いと思われているとご自身で表現された「努力」という概念こそが、物事を続けるために必要なことであり大事な言葉であるとお話してくださいました。また、お客様に寄り添うための自身の「軸」の振れ幅を「包容力」と表現されました。「愛されるホテル」のために、そこで働く人が大事だからこそ「包み込む力」が求められるのだとも感じました。本日はありがとうございました。

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ホテル総支配人に聞く、これからの観光業界シリーズ
第1話 ANAクラウンプラザホテル広島総支配人 原 めぐみ氏
第2話 ザ・キャピトルホテル 東急 末吉 孝弘氏
第3話 ハイアット セントリック 銀座 東京 内山 渡教氏
第4話 メルキュール東京銀座 佐々木 博氏(前編)

「強いぞ!日本の観光業界」シリーズ全6話
ホテルをはじめとした観光に関わる事業者は、「今、何ができるか」「新しい時代を迎えるために何をすべきか」といった視点で物事を考えています。 そしてコロナが収束した後に回復するための準備など、先を見据えて行動しています。
未来の観光業界を担う皆さんへ、お伝えしたい「強いぞ!日本の観光業界」

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